ハーグ条約のパンフレット

2014.5.30

このあいだ打ち合わせの時に、

外務省が発行している、ハーグ条約に関する資料をいただきました。

「ハーグ条約ってなんだろう?」というパンフレットです(写真)。

パンフレットの上の部分に「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」と書いてあるように、

ハーグ条約は、必ずしも国際結婚や「ハーフの子供」だけが対象なのではなく、たとえば日本人同士の夫婦に子供がいて、なんらかの理由で片方の親が子供を海外に無断で連れて行った場合も、このハーグ条約が適用されます。なので「国際的な子」という書き方なのですね。

いっけん、国際結婚の夫婦や、「ハーフの子供」がいる家庭だけの問題だと勘違いされてしまいやすいこのハーグ条約ですが、転勤や留学などなど様々な理由から日本⇔海外間の移動が増えている今、いわゆる「普通の日本人同士の夫婦」に子供がいる場合も、このハーグ条約は無関係のものではないはず。

ちなみに、上記の外務省のパンフレット(写真)を読んでみると、「アニメオタクになった日本人夫に怒ったフランス人妻が、(夫に無断で)日仏ハーフの子供を連れてフランスに帰ってしまう」(=無断で連れ去り=誘拐)という設定が妙にリアルで失礼ながら笑ってしまいました。でも最後にはハッピーエンドで良かった!

ハーグ条約については以前にも書いたのですが、日本がハーグ条約に加盟したのが今年の4月1日なので、早くも2ヶ月が経とうとしているのですね。

しつこいようですが、私が常々思うこと。それは、ハーグ条約は

「『元々いた国』に子供を返すことが、子供にとって良い事」という考え方に基いて作られているため、

子供の幸せを考えると、「最初に住む国の選択」を親は、よおおおーーーーく考えた上でしたほうが良い、ということ。

ただ、一概に「住む国」といっても、どの国で仕事ができるか、どの国で仕事が見つかるか・・・などなど色んな親の事情が絡んでくるので、むずかしい問題ではあるのですが・・・

そして「ハーグ条約」について勉強をするたびに、やはり毎回感じるのは、

「実家に帰る」ことに関する、日本と欧米の「考え方のちがい」。そう、文化のちがいですね。

・・・日本の昔の漫画を読んでいると、

夫婦ゲンカをして怒った奥さんが「実家に帰らせていただきます」とプンプン怒りながらスーツケースをゴロゴロ引く描写がよく出てきますが(たしか、私が読んでいた「ドラえもん」にも、そのような場面があったような気が・・・・)

この「実家に帰らせていただきます」を国際レベル&子連れでやってしまうと、一気に大問題になってしまうのですね。

外国人である夫と一緒に海外に住んでいる日本人女性が、旦那さんとのケンカの末

夫に無断で

「しばらく(子連れで)日本の実家に帰らせていただきます」と家を飛び出し、国境を越え、日本の実家に行くのは違法(誘拐にあたる)ということです。

そういえばドイツには「実家に帰る」という言い回し自体が無いのですが、

もしかしたらこの「実家に帰る」のは東洋的な発想なのかもしれません。(昔、イランについての本を読んだ時に、イラン人女性が「実家に帰らせていただきます」と実家に帰ってしまった場面があって、「ほおお日本と似ていてイランでも女性が実家に帰るという概念があるんだなあ。。。」と思った記憶があります。)

なんだか話がそれてしまいましたが・・・

まとめると、「ハーグ条約」そのものが西洋的な発想をもとに作られたものだと言わざるを得ません。ただそうは言っても「ハーグ条約」は子供の人権を守っていますし、子供の立場からすると「大人になるまで、ずーっと両方の親に会える」「片方の親に連れ去られることはない」という利点があります。なんといっても、日本が「ハーグ条約」に加盟した以上、その条約に違反することを(いくら文化が違うとはいえ)個人がやってはいけないですよね。

「ハーグ条約」の詳細に関しては以下の外務省のリンク↓をご覧ください。

国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)

サンドラ・ヘフェリン

コメント

  • このことを、一人でも多くの生粋の日本人が理解できたら幸いです。

    少し似た話ですが(実際はもっとひどい)、
    『わたしはノジュオド、10歳で離婚』ノジュオド・アリ著
    を思い出します。
    イエメンでの出来事ですが…。

    話しをもとに戻して、
    仲の悪い両親を持つ子供ほど不幸な方はありませんので。

    6:05 PM Maria
    • Mariaさん

      コメントありがとうございます。書かれていた本(「私はノジュオド、10歳で離婚」)、アマゾンで今注文しました!読む前から言うのもナンですが、「文化のちがい」を認めるのは大切だけれど、「文化のちがい」を切り札に子供や女性に負担を強いるのはダメですね。女性割礼(ソマリアなど)や、女児を老人の男性に嫁がせたり(イエメンなど)、離婚の際はそれが日本のやり方だからと子供を片方の親から引き離したり(日本、あくまでも一部の「日本」ですが)。ドイツでも、昔は「子供は叩いて育てるのが当たり前」とかもっともらしい事を言いながら子供を虐待してましたが、今は改善されつつあります。法律ができましたからね。ただ、それを守っていない人もいますが・・・。
       
      いろいろとむずかしい問題ですね。★サンドラ★

      11:26 AM サンドラ・ヘフェリン
  • 「実家」という表現、確かにないですね。「里帰り出産」にも少し驚かれた記憶があります。
    私達夫婦は結婚する前に、どちらの国を基盤とするかなど、話し合って決めました。アメリカなどでは、特に財産に関してPrenup(婚前契約?)を決めておく、なんて話も聞いたので。
    ハーグ条約、とにかくお世話にならないよう、努力します!!が、私の周りの国際家族にもこの情報を共有しておきたいと思います。

    6:25 PM Erika
    • Erikaさん
       
      コメントありがとうございます。おっしゃる通り「里帰り出産」はドイツにも無いですね。これも興味深い点だと思います。
       
      アメリカのPrenupですが、ドイツにもあります。”Ehevertrag”といって結婚の際に財産やそのほかシビアな重要事項について予め決めておく契約ですね。日本とはだいぶ考え方が違うかもしれません。
       
      はい、ハーグ条約、いろんな人に広めてください。「知らなかった」では済まされないものですから、広く知れ渡ることが大事かと思います。無断で子供を連れ去ると、親といえども、最悪の場合、国際指名手配されてしまいますから。★サンドラ★

      11:31 AM サンドラ・ヘフェリン
  • バングラデシュにも「実家に帰らせて頂きます!」はありますね。独身男女の一人暮らしが厳しい文化の表れかもしれません。
    イスラムの国、バングラデシュではよく持参金の問題を出されたりしますが、これは昔ながらの風習が色濃く残る田舎の話。都市部では持参金はトラブルの元であるということで、とっくに廃れ、イスラム式の結婚証明書、Nikah Namaでは、離婚した時(多分^^;)に旦那さんが支払うお金の金額が記されます。さらに、Nika Namaは正式に役所に登録されるため、2人目の奥さんを簡単にもらうことができない仕組みになっています。といってもバングラデシュでは一夫多妻は一般的ではないため、今のところはうまくいっているようです。
    ですが、うちの場合、喧嘩して「実家に帰るわ!」となったことがありません。せいぜい近くのマクドナルドまで家出ですねwww。私の実家には家族全員で帰りますし、旦那さんの実家にも3人で帰りたいです ^^;。

    11:48 PM Jannat
    • Jannatさん
       
      興味深いコメントありがとうございます。たしかに、独身男女の一人暮らしが難しい国、または独身男女が長いこと一人暮らしをしていると「なにか変な事情があるんじゃないか」というような目で見られてしまうような文化圏では、「母親(または父親)が子供と二人暮らしで生活する」というのはむずかしいのかもしれませんね。そんな感覚も含めて、「なにかあれば『実家に頼る』」ことになるのだと思います。
       
      バングラデシュも他の国と同様、都会と田舎では風習にかなりの差があるみたいですね。バングラデシュの話、とても勉強になります。
       
      ・・・・それにしても、「家出がマクドナルド」には笑いました!^^★サンドラ★

      12:03 PM サンドラ・ヘフェリン
  • そういえば、グリム童話集の中に『わがままな子ども』という話がありますよね。
    『子供は叩いて育てるのが当たり前』と説いているのが。
    けれど、それが子供を虐待する親の言い分にもなるので、そこが難しいところです。

    12:06 PM Maria
  • Jannatさん
    この方、『乙嫁語り』で持参金の事を学びました。
    中央アジアの話しですが、イスラム圏あたりの女性は、アクセサリーを常に身につけるそうですね。
    それが彼女達の『財産』であるので。
    あと、魔除けのためにも、と聞いたことがあります。
    話を元に戻して、社会的弱者の人権も重んじられる世の中になるといいな、と思います。

    12:14 PM Maria
  • Mariaさん、
    そうですね。アクセサリーは財産なので、24金を贈り物にすることも多いです。最近でこそ投資という感覚が強くなってきましたが、昔はそうでした。
    幼いうちに女の子が老人に嫁がされて幼児性的虐待の被害者になる、ということはインドでも行われてきました。今では都市部を中心にとっくに廃れたのですが、まだド田舎では残っていて、女の子が教育の機会を奪われ、社会問題になっています。
    これはイスラムの習慣だと誤解されてしまっていますが、実は土着の悪しき習慣で、ムスリムでなくても被害にあいます。イスラム社会では男の子も女の子も平等に教育を受けさせることを奨励していて、そのために懸命に働く親も沢山います。まっとうなイスラム社会であれば、女の子の早すぎる結婚、虐待、名誉殺人などは犯罪とされます。
    うちの旦那さんは、世界で女の子たちが虐げられている現実がまだあることが信じられないそうです。Zana Muhsen著「Sold」を読んでみても「金のために娘を見ず知らずの男のところへ売るなんて、あんなの父親じゃない!父親ならば娘を育てて守るものだ!」と憤慨していました。これを聞いて、うちの旦那さんは娘を売るような極悪人じゃない、と確信しました ^^;

    12:58 PM Jannat
  • Jannatさん
    まあ、なんだかんだ言って、これからはBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の時代なので、Jannatさんの娘さんが大人になるころにはインド情勢は改善されていると思います。

    11:10 PM Maria
  • あと、インドってイギリスや中国と肩を並べる最高峰の文化を持っていますよね。
    今、インドはまだ発展途上国の段階で、インド系=貧しいとみられがちですが、上にも書いた通り、これからはインドの時代が到来するので、これらのステレオタイプは薄れていくと思います。

    10:26 AM Maria
  • Mariaさん
    そうですね。以前に比べればインド系=貧しい、は聞かなくなりました。それでも人によったら黒船時代を生きているおじさん、おばさんもいて、そういう人たちは「バングラデシュってガスも水道も電気もないんでしょう?」「子供が通える学校がないんだよね!?」というニュアンスのことを聞かれます。これを聞くと、いつもため息が出ます。
    昔ながらの生活をしていて、学校が遠すぎて通えない、というのはド田舎の話。主要都市や郊外都市で電気が通っていないところはないし、教育熱心な親が多いため、都市部には私立で授業料が比較的安いEnglish medium schoolが沢山あります。

    1:03 PM Jannat
  • Jannatさん
    はっきり言って、インド系=貧しいとみられるのって、マスメディアの影響が強いと思います。
    だって、日本のマスメディアって、欧米系(アメリカやイギリス、フランス等の西欧)=豊か、と放送するけれど、アジア系(アジアという枠が大きすぎます。アジアは主に中国あたりを指していると思います。そして、インドはインド、イランあたりはペルシャ、サウジアラビアあたりはアラブなのでは)は貧しいとメディアを通じて映されますよね。
    Jannatさんの夫がそういう偏見の目で見られるのも、日本のマスメディアの影響と言っても過言ではないでしょう。
    バングラディシュには水道がない、ですか…。
    ステレオタイプにも程があります。
    この方、テレビを通じてでしかないものの、バングラディシュの首都ダッカには、少なくとも電柱があって、道路には自動車が沢山通っていましたよ。
    日本のマスメディアがアジア系=貧しくて、文化水準の低い発展途上国、と放送するのを止めることを切に願います。

    10:11 PM Maria

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