映画「パドレ・プロジェクト~父の影を追って」
先日、映画「パドレ・プロジェクト~父の影を追って」の試写会に行ってきました。
この映画、お笑い芸人の「ぶらっくさむらい」こと武内剛さんを追ったドキュメンタリーなのですが、なんと「出演」だけでなく「監督・プロデューサー」も武内剛さんなのです!
武内剛さんはカメルーン人の父親と日本人の母親の間に生まれた「ハーフ」ですが、カメルーン人の父親に会ったのは武内さんが2歳だったころが最後。以後父親とは交流をしておらず、父親の連絡先さえ分かりません。唯一知っていたのは「父親がイタリアにいる」ということだけです。
お笑い芸人として頑張っていた武内さんはずっと「仕事で成功してからお父さんに会いに行こう」と思っていたそうです。でも武内さんが40歳になり、コロナパンデミックという世界未曾有の経験をして、「どうしても父親に今、会いたい」という気持ちになったといいます。それはコロナ禍の一年目、イタリアで多くの死者が出た、ということとも関係しています。「もし父親が生きているのならば、今、会いたい」―――そんな気持ちで武内さんは2022年5月、父親を探すためイタリアに飛び立ちます。
映画を観て思ったことは・・・・
「子供の気持ち」がストレートに伝わってくる映画だということ。国籍も文化も違う両親から生まれた子供の「気持ち」。
純粋に父親に会いたいという子供の気持ち。これは誰にも否定できるものではありません。
かといって、この映画は「お涙頂戴」的な要素とは無縁です。変に演出をしたり、作りこんだりしていなくて、本当に自然で、武内剛さんの「ありのままの日常」が見えてくるのです。
私が個人的に好きだったのは、武内剛さんと母親の信子さんがお話しするシーン。このお母様、本当に「いいキャラ」をしているんです。お母様が話すたびに、ほのぼの。映画館の客席も笑いに包まれました。
先に書いた通り、武内剛さんの生活が本当に自然に映し出され、ある意味淡々とストーリーは進んでいきます。全体的に「サラリ」とした映画なので、見ていて「後味が良い」です。こってりしていない。でもちゃんと味はある、という稀有なドキュメンタリーです。
私はこの映画を思春期の十代の子たちや大学生、そして世の中の「普通のサラリーマン」の人達に多く見てほしいです。・・・・あ、「サラリーマン」はちょっと昭和な言葉でしたね、ごめんなさい。「普通に会社に通っているような社会人」と言ったほうがよいかもしれませんね。とにかく多くの人に観てもらいたい映画だな、と思いました。
というのも、「お父さんとお母さんが結婚していない」人が世の中にはいる、という当たり前のことが再認識できます。世の中は「婚姻関係」から生まれる子供ばかりではありません。この映画を観ることで、ハーフの人に対して「お父さんとお母さんはどこで知り合って結婚したの?」という無邪気である意味残酷な質問をせずに済むかもしれません。
そして・・・・
黒人で日本語の名前(武内剛)を持つ人が普通にいること。
この日本に「黒人の日本人」が確かに存在していること。
そんなことも広く伝わるといいな、と思いました。
武内剛さんが伝えたかったのはこういうことではないのかもしれませんが・・・・こういうことを「知っておく」ことはやっぱり大事だと思うのです。
・・・・私の持論が長くなってすみませんでした。
さて・・・・
武内さんは父親を探し出すことができるのでしょうか・・・?
父親に会うことができるのでしょうか・・・?
「パドレ・プロジェクト~父の影を追って」は 2024 年 8 月 31 日(土)より新宿 K’s Cinema ほかにて全国ロードショーが決定していますので、皆さん是非観てくださいね。
サンドラ・ヘフェリン