私がずっと感じてきたこと。それは、世の中の人達がハーフに対して持っている「イメージ」と、実際にハーフとして生きる「現実」の間には相当なギャップがある、ということ。
世間が抱くハーフのイメージは「ハーフはバイリンガル」、「モデルさんにはハーフが多い」など華やかなものが多いようですが、ハーフの現実は色々大変なことも多かったりします。色々話し合うことで、そのズレというか、ギャップを少しでも埋めていけたらいいな!そんな思いからこのサイトを立ち上げました。テーマ別にコラムも書いてますので、ぜひご覧ください。

NEWまたまた国籍について

2014.9.2

ハーフの国籍の話になると、

当然、複数の国籍を持っているハーフの話にもなるのだが、

ネットでも、現実の世界でもビックリさせられるのが、

周りの人が、いとも簡単に「でもさ、A君/Aちゃんは日本の国籍を選んだわけなんだからさ、ドイツの国籍は無くすべきだし、外国の国籍は放棄しちゃえばいいじゃん。」などと言うこと。

こういう意見を聞くたびに、

あ~あ、ぜんぜん知らないでアドバイスしちゃってるよなあ、、、、と思います。

国籍を、「ギブアップすればいいじゃない?」と簡単に言うけど、

そんなに簡単なものではない。

国によっては、本人にその意志があったとしても、そもそも国籍を放棄できない国もありますし(スイス、イスラエルなど)、それ以外のところでも、色んな複雑な事情が絡んでいるのです。

たとえば名前の話。

日本とドイツの国籍を両方持っている30歳の日独ハーフの男性・太郎さんの場合。

日本のパスポートには、山田太郎と書かれています。

ドイツのパスポートにはAndreas Peter Taro Müllerと書かれています。

太郎さんはドイツで育ちました。太郎さんのドイツのAbitur(大学に行けるための学校(ギムナジウム)の卒業試験)の卒業証書には、ドイツのパスポート通りAndreas Peter Taro Müller と書かれています。ドイツの大学の卒業証書にもAndreas Peter Taro Müller と書かれています。

ドイツの大学を卒業し、何年か経ってから、太郎さんは日本に来て、日本で就職活動をしました。

就職活動の結果、運良く内定が出て、太郎さんは上記のAndreas Peter Taro Müllerと書かれたドイツの卒業証書のコピー及びドイツのパスポートのコピー、そして日本のパスポートのコピーを勤務先の会社(外資系)に提出しました。会社としては、ドイツの卒業証書の名前がドイツのパスポートに記載されている名前Andreas Peter Taro Müllerと一致することがわかりますし、その上で、「あ、日本の国籍(「山田太郎」と書かれた日本のパスポート)もあるんですね^^」となるわけです。

これが、もし、周囲のアドバイス通りに、ドイツの国籍を放棄したとしたら、どうなるでしょうか。

真っ先に浮かび上がる問題として、ドイツの国籍を放棄してしまえば、手元には日本のパスポート(「山田太郎」の名前が記載されたパスポート)しか残らないわけですから、就職活動などの際に、なぜ卒業証書の名前(Andreas Peter Taro Müller)とパスポートの名前(「山田太郎」)が一致しないのか、について「説明」が出来なくなります。何せ手元に、Andreas Peter Taro Müllerと書かれていたドイツパスポートが無いわけですからね。

つまり、ドイツの国籍があれば、そのドイツのパスポートを持って、この卒業証書に記載されている名前は確かに僕ですよ、と勤務先や色んな機関に対して「証明」が出来るわけですが、ドイツのパスポートがなくなってしまうと、卒業証書に書かれた名前がイコール自分だという証明が出来なくなってしまうわけです。

そして「証明ができなくなる」ということは、いわば自分が一気に不審人物に成り下がってしまう、ということでもあります。

会社によっては、今のパスポート(日本のパスポートに記載されている「山田太郎」という名前)と卒業証書の名前(Andreas Peter Taro Müller)が一致しないような不審な人物は雇いたくない、という会社が出てくることもあるでしょう。

けっきょく外国の国籍を放棄したところで、浮かび上がってくる上記のような名前の問題について責任を持ってくれる機関など、どこにもないのです。国だって責任を持ってくれません。外国の国籍を放棄した結果、名前が原因で日本でも外国でも就職活動が上手くいかなくても、周りは誰も責任を取らないわけです。

こういう就職活動一つを考えても(←就職活動はあくまでも、一つの例に過ぎませんが)、自分を守るために、両方の国籍を持ち続けている人は多いのですね。

他人に簡単に「アナタは日本の国籍を選んだんだから、外国の国籍は捨てちゃえばいいじゃん」と言う人は、たとえば放棄後に、仕事に悪い影響が出てお金に困った場合、金銭的サポートでもしてくれるんですかね???しない場合、変なアドバイスはしないほうがよろしいかと思います。

国籍の問題は非常に複雑ですので、他人が簡単に「日本の国籍を選んだのだから、外国のは放棄しちゃえばいいじゃん」と言える問題ではありません。

国によっては、子の国籍が親の国籍と異なると、またはその国の国籍が無いと、

親の遺産がもらえない国もあります。つまり外国の国籍を放棄したら親の遺産がもらえなくなるケースもあるわけです。

外国の国籍を放棄した人が日本国籍のみになり、親の遺産がもらえなくなり、上記のような名前のトラブルで就職活動もままならなかったら、日本国はその人に喜んで生活保護を出すのでしょうか?周りの人達は金銭的なサポートをするのですか?・・・実際には、「自己責任」だとか何とか言って何のサポートも無いのが事実ですし、たとえサポートを得られたとしても「喜んでサポートする」人や国は皆無だと言えるでしょう。

逆に言うと、上記のような事を懸念しているからこそ、国(日本)は「個人が他国(外国)の国籍を放棄する事」について、あくまでも「本人の努力義務」とし、「任意」(強制ではない)としているのだと想像します。

最後になりましたが、この「国籍」や「外国籍放棄」について言いたいことは二つ。

一つは、ハーフの人にたやすく「外国の国籍、なくしちゃえば、いいじゃん」と言わないでほしい、という点。「しょせん、他人事」だと思って簡単に考えているのかもしれませんが、現実は冒頭の通り、もっと複雑です。

二つ目は、日本は長い目でそろそろ「堂々と二重国籍を持つこと」を認めたほうが良いのではないか?と思います。(現段階でも、日本国籍選択の際の、外国の国籍の放棄に関しては、あくまでも本人の努力義務である事から、本人の任意であり強制ではないので、国は暗に現段階でも二重国籍を認めているというか黙認はしているんですけどね。でもそこを、努力義務等と言わず、堂々ともう一方の国籍を国が認めたほうが良いのではないかと。)

やっぱり、「国際化」のためには、国籍に関する理解も大事かと思います。国レベル、そして一般市民レベルの双方において。

2020年に日本で行われるオリンピックが「ただのドンちゃん騒ぎ」だけで終わってしまっては残念なので、それまでに国籍に対する考え方も含め色んなことが国際化されると良いですね。

皆さんの国籍に関する体験談、ご意見・・・等々ありましたら、ぜひ以下のコメント欄にご投稿くださいませ。

宜しくお願いします。

サンドラ・ヘフェリン

※本文に登場する名前(「山田太郎」など)に関しては、プライバシー保護のため仮名です。