「好み」と「差別」の狭間で

2015.1.15

前回のコラムに引き続き、今回もまた難しい話です(笑)

 

「ハーフ」のみならず人の容姿の話になると難しいな、と常々感じているのは・・・・

 

「好み」と「差別」の区別ってむずかしいな、ということ。

 

逆に言うと人間の「好み」と「差別」って紙一重なのかもしれません。

 

ハーフの人々の多くは、「ハーフの彼女がほしい!」とか「ハーフと付き合いたい!」といった旨の事を言う人を嫌います。

 

白人は「白人の女性と付き合いたい!」または「白人と付き合きあってみたい!」と言われたら、マトモな感覚の持ち主であれば、あまり良い気はしないでしょう。

 

黒人系の人々も「私、とりあえず黒人と付き合ってみたかった!」と言われたら、嫌なんだろうな、と想像します。

 

純ジャパの日本人も、もし白人系や黒人系の外国人に「とりあえず東洋人と付き合いたい!」と言われたら、あまり良い気はしないと思うのです。

 

さて、しつこくなりましたが、

 

ハーフの顔立ちやスタイルが好き⇒ハーフと付き合いたい!

 

白人の髪質や肌質が好き!⇒白人と付き合いたい!

 

黒人の肌の感じが好き!⇒黒人と付き合いたい

 

これらは、いっけん、ポジティブな発言ではあるものの見方によっては問題発言ですよね。

 

いわば人種によって「付き合いたい」と判断しているわけですからね。

 

以下のようなものは完全に問題発言だと言えるでしょう。

 

「オレは黒人の女にはあまり魅力を感じないし、白人と付き合いたい」

 

「私は東洋人の男性には魅力感じないから、やっぱり黒人の男性と付き合いたい」

 

「白人の女はデカくて食べられそうだから、やっぱり日本人の女と付き合いたい」

 

などなど。

 

上記のような発言、公の場で言えば問題になってもおかしくありません。

 

ところが、以下の発言に関してはどうでしょう?

 

「オレは、デカい女はタイプじゃないし、小柄で華奢な女が好きなんだ」

 

「私は寄りかかると、倒れちゃうような男性は嫌。肩幅がある男性が好き」

 

「オレは太めはあまり好みではなくて、スリムな女がやっぱりいいよなあ」

 

言い方にもよるのでしょうが、上記は世間では比較的「個人の好み」として、とらえられがちなのではないでしょうか。スリムが好きとか太めが好きとか、スリムは嫌いとか太めが嫌いとか。

 

現に公の発言で「(ボクの)好みは小柄でサラサラの黒髪の人」というニュアンスのものはよく聞きますし。

 

ですので改めて考えてみると、「好み」と「差別的な感情」の線引きって非常にむずかしいことがわかります。

 

人によっては、「真っすぐな黒髪がオレは好みなんだから、金髪の白人女とは付き合えない、日本人女性が好きといってなにが悪いんだ!」って話にもなってくると思います。

 

そう、仕事なら多くの場合、容姿に関する差別は許されないことである、という共通認識が世間にはありますが、これが仕事ではなく「恋愛」となると、「恋愛のおける好みは本人の自由」といった部分が大きいので、「金髪が好き!」「真っすぐな黒髪が好き!」「スリムが好き!」といった発言が出てくるのですね。

 

そんな中で「ハーフの人と付き合いたい」「黒人と付き合ってみたい」などの発言が出てくるのだと想像します。

 

この手の発言が「差別」なのか、それとも単に「個人の好み」として片付けるべきなのかはむずかしいところですよね。

 

恋愛に関して言えば、どういう(容姿も含めた)好みで、どういった動機で、どんな人と恋愛しようが、個人の自由ですし、当然、結婚に関しても、どういう動機で自分の(容姿も含めた)好みの人と結婚しようが、双方がそれでよければそれは完全に「自由」であるわけです。

 

ですので、仕事を一歩離れた場、そう友人関係や恋愛関係、結婚に関しては「差別」の定義がむずかしい部分があるのですね。

 

「恋愛も中身で勝負!」という意見もあるのでしょうが、実際のところ、恋愛のスタートは容姿から入ることも少なくないのは誰もが認めるところですし。恋愛において「相手にこういう容姿を求める」部分も多いのではないでしょうか。なんとなく雰囲気や容姿が自分の好みだったから、近づいて、それから中身を知る、というか。

 

またまた長くなってしまいましたが、「自分の好み(例えば好みの容姿について)を表明すること」と「差別的な発言をすること」は紙一重だというお話でした。いや、もしかしたら紙一重どころか違いなどないのかもしれません。

 

恋愛において異性に求める容姿は、あくまでも「個人の自由」だと世間ではとらえられているのですね。

 

ただ余談ですが、ドイツのBoris Beckerのように、付き合う女性全員が同じ系統の容姿となると、もしかすると、女性の中身よりも「容姿や見た目における『人種』が自分の好みであるか」を重視するタイプなんだなあ、という感想は抱きますです。

 

あと・・・ホメているのかもしれませんが、「ボクは今まで外国の女性としか付き合ったこと、ないんですよ~」と初対面でキラキラした目で言う男性もいますが、言われた側はちょっと微妙な気持ちにさせられますね。とくに、続けて「オランダ人でしょ、ポーランド人でしょ、ドイツ人でしょ、アメリカ人でしょ・・・」などと数え上げられると、「白人の女だったら、誰でもいいんかい!」とツッコミを入れたくなるところではあります(笑)

 

・・・と本当に長くなってきたので、今日はこのへんで。

 

読んでいただいて、ありがとうございます。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

 

サンドラ・ヘフェリン

P.S. こちらのコラムもご覧くださいませ。「ドイツは、身分社会?!」・・・Möchtegernという言葉の使われ方を見ると、確実にそう感じます。ドイツの社会に興味のある方、ぜひ読んでください。

 

コメント

  • う〜〜〜ん・・・・。これって見かけによる差別とかを突き詰めて考えていくとよくぶつかる問題だし、「生まれつきどうしようもないこと」に減退したいからこそ背の高さやら(努力ではどうにもできないと思われる)体型やらに話をしぼられたと思うのですが・・・。

    やっぱり人種(と認識されてるもの)には見かけの問題だけでない、いろいろな歴史的・文化的背景やそれに基づいたいろいろな先入観が付随してるわけですよね。例えば、アメリカでいう「黒人」とイギリスで言う「黒人」とは多くの場合、歴史的背景やそれぞれ国での立ち位置等が全く違うわけです。これは日本における「アジア人」と欧米における「アジア人」が多くの場合、違うことを意味するのと同じように。

    そういうことを考えた場合に、「私、黒人が好き♡」って発言はやっぱり「背が高い人が好き」とは質的に違うと思います。昔、一瞬(笑)英語を教えた相手が「私は黒人が好き。」と言ってました。発言の主旨を探ろうといろいろと質問してみたのですが、どうやら「黒人」は「ナオミ・キャンベルみたいに足が細くて長くてかっこいいから!」と言うことだったらしくて、多分もうちょっと探れば、サブカル的で、ヒップで、運動神経もいいし、みたいなステレオタイプ的な発言も出てきたのでは、と思うのです。これってその人種の人をみんなひとくくりにして、突き詰めて言えば、その「人種」の人に個人としての性格があることを完全に忘れ去っているわけで、そこが問題なんだと思います。こういう思考が「残念ハーフ」だとか、どういう人が「正統ハーフ」や「ハーフらしいハーフ」なのかを判断する基準にも繋がってくるんでは?

    背の高さや体のつくりというのは、本当に表面的なことのごく一部なので、やはり人種や○○人という、性格なども含めた、その人のすべてを規定しようとするステレオタイプとは違うのではないかな、と思います。だから、最終的には「個人の好み」ではくくれない問題なんではないんじゃないのかな。社会的にそれですませていい問題だと思われてはいけないんじゃないのかな、と思います。

    「難しい」話というのは、それだけでいろんな人から、強い反応をされる話でもあると思います。大変な面もあると思いますが、発信していかれることが大切なので、がんばってください。「難しい」話かもしれなくても、こういうふうに多くの人に読まれて、考えてもらえるようなこういう場を提供してくれてありがとうございます!

    5:06 AM かぐや
    • かぐやさん
       
      コメントありがとうございます!書かれていたアメリカの黒人の話とイギリスの黒人の話、すごくわかりやすかったです。そうですね、本来は容姿にしぼれないテーマなのですが、たとえば黒人の黒い肌が好き⇒だから黒人と付き合いたい!と考える人も一部にはいるわけで、そういう人が果たして、イギリスの黒人とアメリカの黒人の違い(文化的な違い)に興味を持つのかが微妙なところです。ヘタすると、「イギリスの黒人とアメリカの黒人、肌はどんなふうに違うの?」といった感じで最後まで容姿にしか関心を示さない人もいるのではないかと想像。このような想像をしてしまう理由は、やはり「ハーフ」のテーマになった時も、最初から最後まで「容姿」にしか興味を示さない人もいるから。「アングロサクソンと日本とのハーフは顔立ちがこうであーで、でもドイツと日本のハーフは顔立ちがあーでこーで」と、中々「文化」や「その人個人の中身」まで話がたどりつかない(笑)
       
      まあ答えが出ないテーマではありますよね。でもこれからも書いていこうと思います。かぐやさんのコメントはいつも興味深くて投稿に感謝!です☆★サンドラ★

      5:23 PM サンドラ・ヘフェリン
  • ひゃ〜〜〜。上記、長い!!!すみません!!

    5:07 AM かぐや
    • かぐやさん 
       
      いえいえ^^長いコメント大歓迎でございます(^_-)-☆★サンドラ★

      5:25 PM サンドラ・ヘフェリン
  • こんにちは。
    久しぶりにコメントさせていただきます。
    興味深く読ませていただきました。
    ここにある例ほど極端ではない発言=ネガティブなことを抜きにして「黒髪がタイプ」とか「小柄な人が好き」といった言い方に関しては、日本の場合「仕事」でも少なくないと思います。
    ただ、これを本人が自発的に言ったのではなくて芸能人などがインタビューなどで「求められる」こともけっこうありますよね!?
    つまり読者や視聴者・聴取者が、知らず知らずに心のどこかでそういった(時には差別の色が濃くなりそうな)発言を「期待」してしまっている面も否定できないんじゃないかと、このコラムを読ませていただいて改めて感じました。
    「好きな異性のタイプは?」なんていう質問あちこちで見聞きしますよね!?
    ドイツなど、日本以外でもこういう質問項目ってよく見られるのでしょうか?
    これからも「楽しみながら考えられるコラム」読ませていただきます。
    宜しくお願いいたします。
    PS1.
    3月初旬にベルリンへ旅行することになり、改めてサンドラさんご出演の放送を聴ける限り聴いて参考にさせていただいてます。
    PS2.
    本日の民放ラジオも聴ける予定なので楽しみです。

    9:31 AM 八木茂明
    • 八木茂明さん
       
      ありがとうございます☆
       
      >ここにある例ほど極端ではない発言=ネガティブなことを抜きにして「黒髪がタイプ」とか「小柄な人が好き」といった言い方に関しては、日本の場合「仕事」でも少なくないと思います。
       
      ↑たしかに『仕事』でもないわけではないですよね。同感です!★サンドラ★

      5:26 PM サンドラ・ヘフェリン
  • これは難しいですね。今思ったのですが、」今まで「○○人、こういう人種が好み」という考えはなかったですね。
    もっと言うと、おそらく私のように「人種」と「中身」が一致しなさすぎるタイプも珍しいかもしれません。日本人からは恋愛対象外にされ、それ以外の人たちからは「日本人(アジア系?)らしくない」と言われてきて、「日本人と付き合ってみたかったんだ」と言われたことはないですね。単にモテなかっただけかもしれませんが。^^;
    それもあるのか、人種や見た目に惑わされないように、としてきただけなんですよね。

    1:29 PM Jannat
    • Jannatさん
       
      「人種」と「中身」が一致していないと、周りに色々と聞かれたりしますよね。ヨーロッパだったら、あれ?なんで、アジア人女性なのに気が強いの?とか(笑) 日本だったら、あれ?なんで白人なのに英語しゃべれないの?とか、いろいろとあります。わかります★サンドラ★

      5:29 PM サンドラ・ヘフェリン
  • 容姿についての言及は事実を述べているだけなので特に問題ないかと。
    問題は、それを理由に好意を寄せるか、嫌悪を表すかで、同じエネルギーでありベクトルが違うだけなんだとおもいます。
    同じ武力でも、奪うために使えば暴力であり、守る為に使えば自衛なのです。
    良い方面に向ければ、加速しより良くなり、悪い方に向ければ悪化するだけなのです。
    しかし物質が重力に負けて落下するように、下に行くのは簡単であり、上に向かうのは莫大なエネルギーが必要なのが、重要なポイントなんだとおもいます。

    5:54 PM ザッシュマン
    • ザッシュマンさん
       
      コメントありがとうございます☆
       
      色んな意見がありますけど、意見の表明は時に気をつけないと差別になったり人を傷つけたりすることもありますね。容姿への言及も時にそうですし、最近の風刺画の事件についてもそうだと思います。テロがいけないのはもちろんですが、ヨーロッパの文化である「風刺画」、全世界で受け入れられている文化ではないので、自分たちの信じているものをおちょくられて書(描)かれて傷つく人(イスラム教徒)が多くいることも考えなければいけないことだと思います。
       
      そういったことも考えると意見の表明って本当にむずかしいですね★サンドラ★

      5:34 PM サンドラ・ヘフェリン
  • はじめてコメントいたします。
    サンドラ様の真面目なブログ記事には、深く考える機会を与えてもらってます。
    日本在住の日系ブラジル3世のアラサー女です。見た目、純極東アジア人です。

    今回の記事は、自分のことを指摘されてる気がして…ヒリヒリしました。ので、コメントしたくなりました…。
    ルッキズムですね。
    私も、少しばかりアジア人以外のルックスの方に萌えを感じるので…当事者はそう思うのね?!と反省しました。
    特に女性はフェミニズム的に男性視線から一方的に客体にされることの嫌悪する理論もあるので…より繊細・丁寧な配慮が必要ですね。

    難しいことを文章にする能力ないのですが、欧米系男性も日本人女性の従順な部分を期待して(中身を期待)交際したいと思う方が一部には居るようなので…
    その国民性の女性の中身を一般化して交際を希望されるのも、「好み」「差別」の問題に関わっていますね。

    サンドラ様原作のコミックエッセイ、知性的なところがとても好きです!
    国際恋愛してる知人カップルに、「ハーフな私の100のモンダイ」をプレゼントしようと思ってます!
    ハーフ(ダブル)のお子様へのケア部分のヒント・気づきになれればな…と。
    その知人カップル、お互いに本当に美男美女で(米男性・日本女性)…やっぱり交際って見た目が大事なんだな~と、思います。私自身は普通レベルなので暗い気分になります。

    ミーハーで浅薄で申し訳ないんですが、個人的にはアジア・白人・黒人・アラブのどの方でもハンサムなら大好きですーー!!ルッキズムですみません。

    1:11 AM sa-ya
    • sa-yaさん

       
      コメントくださってありがとうございます!うれしいです。コミックエッセイも読んでくださっているようで、ありがとうございます☆

       
      人間ですもの、誰でも「好み」はありますので、でも差別になることもあるんだな、と自覚が少しでもあれば良しとしたいです。けっきょく、人と楽しくおしゃべりをしている時に「ねえ、どういうタイプの男性(ルックスとか)が好きなの?」って話になることもあるわけで、そこであまりに気にし過ぎて話し始めると、会話も盛り上がらないし、不自然な会話になりますしね。そういったバランスがやっぱりむずかしいですよね。またこれからも私、ゴチャゴチャとむずかしい事を書くかと思いますが、、、どうぞよろしくお願いいたします!★サンドラ★

      5:42 PM サンドラ・ヘフェリン
  • 人間好みがあって当然だから 多少差別的でも仕方ないと思いますが、
    「外人と結婚したい」などの発言をすると、 あまり賢くない印象をいだいてしまいます。 自分が日本人以外の人と結婚しておいて何よっ! って思われるかもしれませんが、 人種を優先して発言すると、 やはりその本人を本当に見てないような印象になってしまいます。

    どこの国の人でも人種でも、 出会って一緒に語り、飲み食いしてみないと、どんな輩かわかりませんから、 最初から この人は ○○人だから、、、と避けるようなのはもったいないと思います。 うちの義姉(旦那の妹) は、 かなりの長身で、 それでもやはり自分より背が高くないといやだ! と言っておりました。 だから私は、 それじゃ背が低い素晴らしい人がいても、 相手にしないのは、 どうかなー、、、と何度も思ったものです。

    でも自分におきかえてみたら、 やはり私にも、 立ったままプールで浮けるくらい太ってる人は 「やだ!」 ってのがあったので、 人の事は言えないですね。 まあそんな人には、 あまり出会いませんでしたが、 とりあえず、 一緒にバレーボールとか出来るほうが理想だったってのと、食生活が合わないかもしれないっていう現実的な問題もあったと思います。

    ともあれ、 発言をするには、以前よりもずっと、 いろいろと周囲の人が傷つかないように考えるのが大切な世の中になったと思います。

    まとまりませんが、 これにて、、、、。

    9:16 PM きいろ
  • 変に過敏で自己中心的な人が多いように思います。

    それが表に出て、他人に重大な悪影響を及ぼすことが問題なのに、たとえば白人好きアジア人好きといった現実世界には殆ど影響しない個人の主義趣向まで同じ「許されない差別」と批判するのは、それはそれで個人の自由を奪っているのだということに自称平等主義者は気付いていません。

    こういう話は人種だけに留まりません。たとえば見知らぬ男が自分の娘に近付いてくるのを好ましく思う親はいないでしょう。しかし自称平等主義者の論理でいくと、自衛として当然な感情も差別で許されない感情にあたります。その男がレイプ魔かもしれないのに

    自分が皆と仲良くしたいと思っても、相手にも選ぶ権利があるという事実をつらいけれど忘れてはいけないと常に自分を戒めています

    8:24 PM コップ

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