法律について(国籍)

2011.12.30

国籍について書いたPartⅠPartⅡでは主にコメント欄でしか法律について触れてこなかったので、今回は国籍の法律について書きたい。法律家でない私がどこまで国籍にまつわる法律について書けるのか悩んだのだが、やっぱり大事なこと。皆さんからの、国籍の法律にまつわる話も大歓迎です。

まず最初に・・・。世の中では、国籍は「20歳」で選択しなければいけない、という誤解が多いようだが、正確には「22歳」である。

国籍について「法務省:国籍Q&A」 をご覧いただきたい。グラフの「国籍選択の流れ(概要)」のところに、日本国籍を選択する場合は、日本国籍の選択宣言をする事で、国籍の選択義務は履行したことになる、と記載されている。その際に外国国籍を喪失していない場合は、外国国籍の離脱の「努力」をするように、とある。これが一般でよく言われている「努力義務」である。

つまり日本の国籍の選択の宣言をした人は、外国の国籍の離脱に努めなければならないという努力義務規定がある、ということだ。これに関しては、その国の国籍(外国の国籍)が必要な外国の公務員となった場合に、日本国籍を失う可能性があるだけで、外国籍を離脱しないことについて日本側に罰則はない。罰則が無いのは、日本法によって外国の国籍を喪失させるとしたら、それは他国への内政干渉になるため不可能である、というのが一つの理由だ。日本以外の国籍も持つ重国籍者は多数存在すると思われるが、その詳しい数についてデータは存在しない。

日本国籍選択の届出をしただけでは外国国籍はなくならない。国籍選択届けの用紙には「日本の国籍を選択し、外国の国籍を放棄します」と記入されているが、これは、国籍法第16条第1項に規定されているように、強制ではなく、「外国の国籍の離脱に努める」という宣言である。

繰り返しになるが、実情は、日本国籍の選択宣言をしたからといって、自動的に外国の国籍がなくなるわけではない、ということだ。日本側は二重国籍を認めていないが、同時に、日本国籍の選択宣言をした人が外国の国籍の喪失に勤める事が「努力義務」である以上、罰則がないのと、日本法によって外国の国籍を喪失させる事はその国への内政干渉になるため不可能である、というのが実情だ。最終的に外国国籍の有無を決定するのは本人とその国(外国)の法律である。日本の法律は外国の国内法には適用されない。

日本×外国の重国籍者は、日本国内において、日本国籍だけを有する人と同等に扱われる、ということだ。

ただし、相手側の国にも国籍選択制度があれば、日本の国籍を選択することによって、相手国の国籍を自動喪失する場合がある(例えばタイ、インドネシアなど)ので、ハーフの皆さんは日本の法律とともに自分のもう一つの国の法律も調べてみてください。

以前、コラムに「ハーフが10人いれば国籍について10の違うストーリーがある」と書いた。ハーフといっても、国籍に関しては一概に言えず、日本とどこの国のハーフなのかによってそれぞれ状況が違うので、各国の法律を調べる必要がある。国籍に関する各国の法律については、日本に住んでいる方であれば、駐日大使館に問い合わせるのが一番確実だと思う。

国籍に関しては色々こみいっていて複雑ですが、私も含めて皆さんメゲないで法律に詳しくなりましょう!

                           サンドラ・ヘフェリン

コメント

  • 今回のコラムとまとめて前2回とも(国籍シリーズw)非常に興味深く拝読いたしました。
    ハーフを持つ親として出来るだけ多くの選択肢を与えてあげるのが義務だとずっと思っていたので、娘たちにも両方ドイツと日本の国籍を持たせています。でも色々な方の意見を読んで(選択肢を増やすためにあえて1つの国籍に絞ったスペインの方とか)ホント国と国のコンビネーションによって事情は全然違ってくるんだなぁとビックリしました。
    そしていつの日かドイツか日本の国籍の1つだけを選ばなくてはいけないのか娘たちに代わって今から少し残念な気持ちになっていたのですが、このサンドラさんのコラムを読んで「努力義務」だと知り、ホッとした次第です(笑)
    どちらかを絶対に選ばなくてはいけないとしたら、母親の私はいつまでも日本人なのだから、娘たちはドイツを選んだ方が将来のために有利かな?なんて思ったりしていたのですが、心の奥ではモチロン両方あったらそれに越したことはないと思っていました。
    言語にしてもアイデンティティにしても母国にしても選択肢を与えて本人に選ばせるべきだと私と夫は考えています。なので娘たち2人とも日本とドイツの名前があって、どちらでも好きな方を選んでくれたら良いなぁと思っています。今はモチロン日本人学校に通っているので日本語の名前ばかり使っていますが、将来ドイツに行って「ヨーロッパ風の名前が良いなぁ」と万が一思った時には、そちらの名前で自分を表現してくれれば良いし。名前や国籍がドイツ寄りでも2人が私の娘であることには変わりはないのだから。2人が日本でもドイツでも両方の環境を居心地良く感じてくれたら最高なのですが、それは本当に難しいなぁと今から覚悟しています。(だって純日本人のワタシでさえ日本人ってどうなの?!って時々悩んでしまうほどですからw)

    9:21 PM sj
    • sjさん

                                                           
      国籍シリーズ、読んでいただいてありがとうございます。お役に立てた(?)ようでうれしいです^^レスが遅れてごめんなさい。ハーフは国籍も名前も、親が子供に選択肢をたくさんあたえて、「ハーフ本人」に選ばせる。sjさんがおっしゃる通りこれが大事だと私も思います。名前についてもまたいつかホームページでコラムを書こうと思います。

                                                           
      sjさんが書いていた

                                                           
      >名前や国籍がドイツ寄りでも2人が私の娘であることには変わりはないのだから。

                                                            
      ↑ですが、お嬢さんたちは幸せですね。考えてみると、子供にたくさんの選択肢をあたえることを良しとする親、また、子供がどのような選択を最終的にしても見守ってあげられる親、というのはもしかしたら親自身に精神的な余裕がないとできないことなのかもしれません。数々の話を聞いていてそう思いました。

                                                          
      「国籍」について近日中にもうもう一度書く予定ですのでまたちょくちょくのぞいてみてくださいね★サンドラ★

      7:11 PM サンドラ・ヘフェリン
  • サンドラさんお久しぶりです。
    自分の場合は両親が何も自分に言わずに勝手に日本人にされてました。正直話して欲しかったです。自分の場合は生まれがロシアで台湾で育ち、9才から日本に来て、気がつくと日本人になってました。(笑)自分としてはオプションをもっと残して欲しかったです。増してや日本に今住んでないので気持ちも複雑です。父が台湾で戸籍課に勤めてて、その時に戸籍をモスクワ生まれから台湾生まれに改ざんされて、その後日本移住と共に日本国籍取得の流れになりました。自分には何も言わず、何の説明も無く、勝手に決められた事に少し怒りを感じてます。但し、日本国籍で海外を飛び回るのは本当に便利です。パスポートが日本だと入国審査時間が凄く早いです。^^ところでサンドラさん日本の年金に加入してますか?自分は以前日本で会社員だったので厚生年金に強制加入されて払ってましたが、2007年に会社員を辞めて以降は年金払ってません。日本の年金制度の矛盾や不平等さで元が取れない年金など払うか!といつも年金の督促状を日本に帰った時に破り捨ててます。
    ハーフの年金について書かれてます?まだなら是非いつか書いてみて下さい。きっと皆さん千差万別ですよ。

    12:37 AM kengo
    • kengoさん
                                                          

      面白いコメントを下さっていたのにレスが遅れてごめんなさいm(__)m
                                                          

      えっと、ロシア生まれから台湾生まれに戸籍が改ざんされてた?!・・・・・こんなことってあっていいのでしょーか(爆)
                                                          

      >但し、日本国籍で海外を飛び回るのは本当に便利です。パスポートが日本だと入国審査時間が凄く早いです。
                                                          

      ↑現実的で素晴らしい!よく国籍選択を「愛国心」と結びつけて考えるべき、とおっしゃる方もいますが、現実を考えると、ビザ無しで色んな国に行けちゃう国の国籍がほしいのはあたりまえだし、不必要に疑われることのない国の国籍を選びたい、自分にとってスムーズにいきやすい国籍がほしいのはあたりまえだと思います。でももちろんkengoさんの「自分には何も言わず、何の説明も無く、勝手に親に国籍を決められた事に少し怒りを感じてます。」という気持ちもわかります。

                                                          

      日本の年金ちゃんと払ってますよー。

                                                          

      >ハーフの年金について書かれてます?まだなら是非いつか書いてみて下さい。

                                                          

      ↑「ハーフと年金」というコラムを書いてみようかな^^でもあまりロマンチックではないテーマですね(笑)あとは「ハーフと老後」もいいな(笑)って、笑っちゃいけないですね、はい。今も現実的だけど、さらに現実的なテーマに目を向けて書いていきたいと思います★サンドラ★

      7:25 PM サンドラ・ヘフェリン
  • 日本は二重国籍を認めていない、と言いながら、国籍を2つ持っている人に対しての処罰はないよな、と思っていたら「努力義務」だからなんですね。
    私も、もう一度バングラデシュ大使館に電話をして、娘の国籍取得について問い合わせてみました。バングラデシュでは二重国籍を認めています ^^

    10:50 PM Jannat
    • Jannatさん
      バングラデシュ大使館に電話されたんですね!大使館から直接聞くと安心ですよね。私もこれから国籍について、疑問があったら噂にまどわされるのではなく、大使館に問い合わせるなどしてしっかり勉強したいと思います★サンドラ★

      7:28 PM サンドラ・ヘフェリン
  • 大使館から聞くしかないんですね、こればっかりは。皆ケースが違うので、他の人ができたから私も、にならないほうがいいです。特に国際結婚カップルや2世のハーフは、適応される法律が違うことが多いです。
    あと、年金の話が出ましたが、私と娘は日本国籍で、老後も日本に住み続ける可能性も高いため、オプションとして年金を払っています。高いですけどね~ --; 

    1:35 PM Jannat
    • Jannatさん
       
       
      そうなんです。それに、たとえいっけん同じ「ハーフ」同士でも、状況が完全に一致するハーフ同士などまれ(生まれた年もちがう、生まれた場所もちがう、両親の婚姻状況もちがう、自分が生まれた時の親の国籍もそれぞれちがう—などなど一言で「ハーフの国籍」と言っても、違う事だらけの場合も多いので一概に言えない場合がほんとうに多い)なのですから、国籍について誰々さんが出来たから私もできるはず、とか、誰々さんが出来なかったから私も出来ないはず、というわけでもないんですよね。やっぱり国籍に関しては大使館に問い合わせるのが一番確実かと。★サンドラ★

      9:19 AM サンドラ・ヘフェリン
  • 私の1歳の娘は、英国人の母とのハーフです。それで、現在の国籍はと言うと、日本国籍だけです。理由は、まだイギリスに届けを出していないからだけです。

    先日パスポートを取得の際、二重国籍のことを聞かれました。当然、日本でしか届出をしていないので、日本国籍しかないと言ったのですが。あちらは、細かいことを把握したいみたいですね。

    22歳までに国籍をどうするかは、本人次第ですが、「お父さん」としては、ずっと二重国籍のままいて欲しいと思っています。

    重国籍がだめだというのは、日本側の一方的なことであり、日本国籍は、本人が「捨てる」手続きをしない限り、失われることはありません。また、国によって国籍を喪失された例もありません。

    以前、元ペルーの大統領、フジモリ氏が母国で犯罪者とされましたが、親が届出をしてくれてた?おかげで日本国籍があることがわかり、日本に事実上、亡命しました。日本政府は、彼が「日本人」ということで、ペルー政府からの引渡し要請を拒否しました。その後も、彼はペルー国籍を捨てることなく、日本に居続けられました。政府の言っていることは矛盾してないでしょうか?

    それはそうと、、、22歳を過ぎても、2つのパスポートを持っている人に聞きたいのですが。日本出国の際には日本のパスポートを使い、他方の国では、もう1つのパスポートで出入国をした場合、日本再入国の時は、日本のパスポートには、他方の国の出入国記録は残りませんね。この場合、日本のイミグレーションとか、税関で変なことを聞かれたり、トラブルになることはないのか知りたいです。

    1:46 AM Luigi
    • Luigiさん
       
       
       
      コメントありがとうございます。まだイギリスは届出を出されていないとのことですが、早めに出してあげたほうが良いと思います。時間が経てば経つほど、ややこしくなりがちです。
       
       
       
      ペルーのフジモリ元大統領のニュース、おぼえてますよ!フジモリ元大統領が1930年代に南米で生まれた時に親がリマの日本公使館に出生届を出したようです。私はペルーの政治には詳しくないので、フジモリ元大統領が政治的にペルーでやってきた事に関しては知識がほぼゼロなのですが、国籍だけにスポットをあてると「やっぱり、そういうこともあるから国籍は大事」としか言いようがないです。もし彼の両親が彼が生まれた直後にリマの日本公使館に届出を出していなかったら、どうなっていたか。日本国籍がないかもしれないし、そうしたら晩年、日本に「亡命」できなかったかもしれない。自国ペルーで死刑になっていた可能性もなくはないのかも・・・?それぐらい国籍はイザという時には大事ということなんだと思います。ちなみに私の父親(ドイツ人)は1927年生まれで第二次世界大戦経験者なのですが、戦争がトラウマになっており、いつも言っていました。戦争になったら持っている国籍全部を利用して逃げられる国に逃げろ、と。ウチの父親はドイツ国籍のみだったのですが、ドイツで戦争が始まる前に、父親の友達でフランスなど他の国籍を持っていた人は、その国籍(フランス国籍)を使いアメリカや南米や他のヨーロッパ諸国に出国しやすかった。
       
       
       
      ドイツパスポートのみでは、たとえ本人がナチスが嫌でも、他の国には行けない(敵だから)ですし自分の国(ドイツ)に留まるしかなかった人も沢山います。さて、フジモリ元大統領や、第二次世界大戦中のドイツなどかなり昔の話になってしまいましたが、現在の話!
       
       
       
      >それはそうと、、、22歳を過ぎても、2つのパスポートを持っている人に聞きたいのですが。日本出国の際には日本のパスポートを使い、他方の国では、もう1つのパスポートで出入国をした場合、日本再入国の時は、日本のパスポートには、他方の国の出入国記録は残りませんね。この場合、日本のイミグレーションとか、税関で変なことを聞かれたり、トラブルになることはないのか知りたいです。
       
       
       
      ↑これですが、両国籍を持っている友達にも何人(なんにん)か聞きましたが、日本へ帰国時に他国の出入国記録が日本のパスポートに残っていなくてもとくに日本で質問をされた人はいませんでした(何十人にも聞いたわけではないですが・・・)。参考になれば幸いです。★サンドラ★

      9:41 AM サンドラ・ヘフェリン
  • お役所の人が間違った認識をしていることがあるので要注意。
    自分から放棄する義務はありません!

    私も2重国籍で、アメリカ在住ですが、日本に入国する際、90日以内の滞在だったらもう最初からアメリカのパスポートで入っちゃいます。
    そしてアメリカ人として出て行きます。

    それが一番楽なんです。 下手に日本のパスポートを使おうとすると奥につれてかれて質問攻めにあわす意地悪な人もいたりします。

    過去にちょっと面倒だったのでもう最初から楽にしようと思って。 
    ちょっと並ぶけどたいしたことないです。

    4:54 AM Elissa

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