Vol.6 ハーフとバイリンガル教育

2008.11.15

子供をバイリンガルに育てるには?

前号では、ハーフがKYになりやすい、ということについて書きましたが、今回は「KYこそがバイリンガルの条件」だというお話です。

ハーフだからといって必ず英語ができるとか、必ずしもバイリンガルだというわけではないけれど、仮にバイリンガルだとしても、バイリンガルになるためには本人もしくは親が苦労することが結構多い。それは、勉強をたくさんしなければいけなかった、とか言葉を覚えるのが大変だった、という苦労よりも、人間関係の面での嫌な苦労……。

バイリンガルっていうのは、「結果」であって、そこまでいくための道はボコボコ。さまざまなハードルがある。たとえば、幼稚園の頃、私は母(日本人)とドイツの電車の中でも日本語で話していたんだけど、それはバイリンガルにするために「お父さんとはドイツ語」、「お母さんとは日本語」って親が決めてたことだったのね。だから「お母さんとお出かけ」の時は、外にいても、そして周りがドイツ人だらけでも、日本語で会話していたわけです。でも、ドイツの70年代後半から80年代前半は、今ほど異文化にオープンな雰囲気ではなかったから、「ドイツにいながら親子が日本語で話す」というのが必ずしも歓迎されない雰囲気もありました。特に第二次世界大戦を体験したドイツのお年寄りは、『異文化』というものに対して決して寛容ではなかったから。1980年というと、私は5歳だけれど、1900年に生まれている人は80歳なわけで、その年齢のおじいさんおばあさんの中には、『ここはドイツなんだからドイツ語で話せ』という考え方の人も多かったのです。ドイツの街中で、母が私と日本語を話すのも大変だったんだな、と今になって思のです。逆に、母はある意味「鈍感」、あるいはKYだったから、こういうことができたのかもしれません。

日本でも、こういう問題はあります。ハーフの子供をバイリンガルにしようと、母親が子供に英語で話しかけたとしても、その親子の容姿がたまたま「日本人寄り」だと、周りは「日本人なんだから日本語で話せよ~」的な冷た~い雰囲気。親子で英語で話していると、「欧米かぶれ」、「親子して調子にのってる」なんて言われちゃう。でもね、どんなに周りが冷たい雰囲気&嫌な雰囲気だったとしても、そこで負けちゃったらバイリンガルにはなれないんだよね!

 子供自身も、周りのそういったビミョーな空気を感じとっている。だから、せっかく親が子供に外国語を教えようと懸命に、英語やらイタリア語やらで話しかけても、「人前で英語で話しかけないで!」とか「お母さんと一緒にいると恥ずかしい」などと子供に言われちゃったりする。お母さんも子供も大変。

大人になった「バイリンガル」はいわば「完成版」で、「うらやましい」存在であることが多いけれど、そこまで行く数十年の間には親子の葛藤があったり、恥ずかしい思いをしたり、KYだと思われたり……そんな過去があるのです。

それでも、バイリンガルになるには、ある程度KYでなくちゃダメ。「親子でKY」だと、バイリンガル教育において二人三脚でよい結果が出ると思う。たとえば、自分は日本にいるけど、誰がなんと言おうと子供とは英語で話す! とか、ここはアメリカだけど、子供に日本語を教えたいから日本語で話す!とか。

子供の将来を考えたら、周りの空気なんか、かまっちゃいられない、空気なんか読んでられない。これこそ、いい意味で突極の「KY」なのかもしれません。

サンドラ・ヘフェリン  【扶桑社『マリカ』2008年11月号】

コメント

  • KY、賛成です。
    ホントこういう考え方って大事だと思います

    12:45 PM J

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