Vol.5 ハーフはKY?

2008.10.15

ハーフは周りからイジメられたり理不尽な扱いを受けることが多い、と今まで散々書いてきましたが、コト苛めについては色々考えさせられます。というのも、「髪がウンコ色~!」など『容姿が他の子と違う』事が原因のイジメも多い反面、『ハーフの行動』がイジメを誘発する(?)場合も結構多いからです。

『ハーフの行動』・・・。これは微妙です。多くの日本人は、ハーフに対して「顔が外国人っぽい&英語が話せる」という事を期待しているのと同時に、無意識的にではあるけれど「ハーフの行動が他の日本人と同じ」という事も期待しているようです。つまり、髪が茶色で色が白く、顔は外人っぽくて英語も話せるけど、ちゃんと日本人同様『空気の読める人』であることをハーフに求めている。ところが、ハーフの子はそもそも片っぽの親が外国人であり、その事によって家の中で受けている教育が、日本人の一般の子供とは違う場合も多いので、その結果どうしても行動がKYになってしまったりする。他の子が調和を大事にしているのに、一人だけ自己主張が激しかったり(←欧米人の親の場合は「自分の意見ははっきり言うように!と子供に教育している場合も多いからね)、日本は脚を組むのがナマイキだとされているのに、公の場で堂々と脚を組んだり、あと欧米人なんかはよくテーブルがあれば、テーブルの上に腰掛けちゃったりするんだけど、そういう事をハーフの子が日本の学校でやっちゃったりする。日本でお行儀が悪い事、ヘンだとされている事を平気な顔でやってしまう。だって、家の中ではそれがヨシとされているわけですから。

ハーフのこういう突飛な行動がイジメにつながる事が多い。しかもイジメる側には「私達はジェニファーちゃんが外人だからイジメてるんじゃないよ。だってジェニファーちゃんはワガママなんだもん!!」と子供なりの意見があったりするわけで。厄介な事に、『容姿』ではなく、『行動』が原因のイジメの場合、苛める側に罪悪感がない事が多い。

でもこれって、大人はともかく子供にとっては酷だと思うんだよね。だって、これって逆に言えば、ハーフの子供は「髪が茶色で目がくりくりしている分には可愛いし大歓迎だけど、『態度』がちょっとでも普通の日本人の子と違うと許さない」という意味でしょ。酷ですよ。家の中で「これとこれが正しい」と教えられてきたことを、外で実践したら村八分に遭うわけだからさ。村八分になりそうな行動パターンは、上にあるように、1.主張が激しいまたは強い。2.脚を組んだり足クセが悪い。たとえばフツーの日本人が手で動かすものを脚で動かしちゃったりする(←カバンとかね)。3.テーブルの上に座っちゃったりする。4.歩きながらモノを食べたり、自転車に乗りながらリンゴを食べちゃったりする。5.子供のクセに香水をつけている。・・・などなど。

そうそう、よくモメる代表的なものに「ピアス」がある。日本は「子供がピアスをするのは生意気」という考えが根強く(←少なくとも学校機関など教育関係者の間ではね)、校則でピアスが禁止されている学校もある。でも国によっては、ピアスは魔除けの意味もあり、赤ちゃんの頃からピアスをするのが伝統&文化のところもある。でも、ハーフの子が日本の学校でピアスをしていると、イジメに遭うわけで。

この「ピアス問題」、小さい事のように見えて、ハーフや異文化出身の人同士がかかわっていく上での難しさを表しているように思う。規則は「皆」が守るべきものなのか?それとも、「文化」や「伝統」が背景にある場合は、『例外』を認めるのもアリなのか?という問題。もしピアスが認められた場合、周りが「規則は皆が守んなきゃいけないのに、ハーフばかりが特別扱いでズルイ。ワガママ。」ってなるのは目に見えてるしね。

しかし、とても複雑なことに、その「特別扱い」こそが「異文化を認める」という事でもあったりするから、事態は複雑。“外人は規則が守れない&空気が読めない”、”ハーフはKY”と思われる事はもちろん悔しいんだけどね。ワガママだとか、皆と格好が違う、食べるものが違う、何でも特別扱い、とか。これって結構根本的な問題なんだよね。つまり日本人側が異文化をどれぐらい受け入れることができるのかどうか、という問題。もしくは逆に「ハーフ」自身が自分のガイジンの親から受けた教育をどれぐらい無視して、周りの日本の子に合わせられるのか、という問題でもある。

個人的に思うのは、『ハーフ=カッコイイ』という発想に留まってしまうのは残念だということ。だって、これって一部のハーフの美貌とか英語能力を持ち上げ、自分達が見ていて楽しいものだけをハーフに求めてる、って事でしょ。キレイ&エキゾチックは大歓迎だけれど、その他の問題は見たくない&受け入れたくない、っていうのだとしたら寂しいよね。「髪が茶色」&「色白」&「バイリンガル」だけが異文化&ハーフではないし、それ以外のところで、たとえば上で挙げたような行動面での事とか、それゆえのKYの事とか色んな問題がある。そうそう、KYといえば、私の持論は「KYにならなければ、完全に両方の文化を受け継ぐことは難しい」&「KYにならなければバイリンガルにはなれない」です。。。くわしくはまた今度・・・

サンドラ・ヘフェリン   【扶桑社『マリカ』2008年10月号】

コメント

  • 「髪が黒で目が細くて可愛くもない純日本人の子の『態度』がちょっとでも他の日本人の子と違う」場合の風当りの強さに比べれば…
    日本はハーフなら何をしても許される国だと思うんですけどね。「異文化」なら、違っていても許される。しかし純日本人が同じ事をしようとすると認めない国だと思います。

    1:06 AM ななみ

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