日本人がノーベル賞を受賞?

2021.10.6

昨日、今年のノーベル賞が発表されましたね。日本人もドイツ人もイタリア人も入っているということで、ちょっと古い世代の日本人から「これぞ日独伊三国同盟!」などという声が聞こえてきそうです。(←ちなみに私が日本に来た20年以上前は、今よりも「日独伊~」の話をする高齢者が多くいました。)

それはさておき、私がしたいのはそんな話ではありません。気になっているのは、以下です。

上記の産経新聞の記事

≫日本人のノーベル賞受賞者は28人目。

とあります。テレビでも「日本人、日本人」と連発していますが、真鍋淑郎さんは米国籍のアメリカ人です。

米国のほうが研究費が出る関係から、米国に渡り現地で長年研究をしていく中で「米国籍を取得する研究者」は少なくないわけですが、現地(米国)での功績を、「日本、日本、日本人、日本人」とやってしまうのって、あまりカッコよくありません。

でもカッコよくないだけなら、特に私は気になりません。やっぱりこれが気になるのは、国籍はく奪条項違憲訴訟における原告の理不尽な思いを目にしてきたからです。この訴訟の原告の団長である野川等さんは数十年前からスイスに住んでいます。自分の経営する会社がスイスで入札に参加する際に「スイスでは、社長にスイス国籍がないと、会社の入札が認められていない」ため、彼はスイス国籍を取得しました。ところが、そのことで日本の国籍がなくなってしまいました。これを不当だとして野川等さんは「スイス国籍を取得したからといって日本人をやめた覚えはない。」と国(日本)を相手に訴訟を起こしており、これが国籍はく奪条項違憲訴訟 です。(私も何回か傍聴しました。)

「国籍はく奪訴訟違憲訴訟」がオンライン記事などで取り上げられる際、「日本人が外国籍を取得したら、日本国籍がなくなるのは当たり前。外国籍を取得しながら日本国籍も維持していたいなんてワガママ、ズルい。日本人ではない。」といったコメントが大量にみられます。日本の右寄りの人の意見もこれなわけですが、だったら、一言言わせてください。

「(元日本人で)現在は米国籍のアメリカ人がノーベル賞を受賞したからといって、日本人、日本人、と連発するのはやめてください」

「国籍はく奪違憲訴訟」の原告である8名が求めているように、日本が「外国(例えば米国)に帰化した日本人が引き続き日本国籍を持ち続けること」を認めれば、そういう人がノーベル賞を受賞した際に、初めてメディアは堂々と「日本人、日本人」と言えるはずなのです。

でも今の段階で「日本、日本、日本人、日本人」と連発するのは「ちょっと待った!」と思うわけです。

そして、これは余談ですが、私が悔しく思っていること。私の戸籍謄本には日本名「里美」と書かれていますが、私が外人顔のせいか、人に「里美って日本名があるんですよ」と話すと、この「里美」が「サトミ」というふうに当たり前のように「カタカナ」で書かれることがあります。

米国籍のアメリカ人である真鍋淑郎さんには日本の国籍は無く、日本の戸籍からも抹消されていますから、本当は日本のメディアは「シュクロウ・マナベ」と書かなければいけません。

現に、上に書いた「国籍はく奪条項違憲訴訟」の原告は「日本国籍がなくなることで、両親がつけてくれた漢字の名前が、日本でカタカナ表記にされてしまい、悲しい。漢字の名前は自分の日本人としてのアイデンティティー」と話しています。

そんな名前のことや、国籍のこと、メディアにはもっともっと報道してほしいです。

国をまたいで活躍する日本人(研究者や会社経営者など)で「外国籍を取得したことで、日本国籍が無くなること」に苦しんでいる人は少なくありません。このことにもっとスポットを当て、大きく報道してほしいです。

ノーベル賞受賞というおめでたいことについて、こんなイジワルなことを書いてすみません、という気持ちもあります。・・・でも、国際結婚の夫婦の間に生まれた「ハーフ」としては、「都合の良い時だけ」(大坂なおみ選手みたいにテニスで勝った時や、研究者のノーベル賞受賞など)日本人扱いして、「普段」は「海外で活躍する日本人の国籍の悩みには知らんぷり」というメディアも含む日本の風潮はやっぱり悲しいのです。

皆さんのご経験やお考えも、よろしければ教えてください。

サンドラ・ヘフェリン

コメント

  • 私は真鍋さんを「日系アメリカ人」と書くのがいいと思います。
    でも「真鍋さんはアメリカ国籍だから、日本市民は彼の受賞をお祝いしてはならない」とは思いません。
    でも彼は「日本人」と「アメリカ人」の両方なんだということを忘れてはならないと思います。
    ちなみに真鍋さん自身はご自分のことを何人だと思っているのか知りたいです。
    プライベートな質問なので答えてくださるかどうか分かりませんし、そもそもしないほうがいいかもしれませんが。

    2:57 AM 菅沼亜由美
  • Die aktuelle politische Kultur in Japan ist auch für mich, einen ethnisch mehrheitlichen, männlich und heterosexuellen Japaner ohne “Behinderungen”, sehr tief bedauernd.

    11:54 AM Hidy der Grosse
  • おっしゃる通り彼はアメリカ人で、日本とは関係ありませんから、日本人受賞者にカウントすべきではないし、ニュースも医学、化学と同じく10秒で終わらせるべきだし、総理もコメントすべきではないと思います。まぁもっと言えばノーベル賞で何人目とかカウントしてること自体が欧米コンプレックス丸出しでダサすぎなんでやめた方がいいですね。ヨーロッパ人から見たら失笑もんでしょう、こんなの。

    1:07 AM みき
  • 私は法律家ではないので国籍の定義を知りませんが、多重国籍が問題となるのは、国民としての権利と義務をどう扱うかではないかと思います。選挙権や納税などのことです。日本では本籍と現住所が登録されていますが、それが他府県にまたがる場合は、本籍地の選挙権も納税義務もありません。納税を逃れるために外国に本社を置いたり、竹中平蔵氏のように現住所を外国に移す人もいます。そこらの問題も整理して、かつては日本人として生まれ生活し、当然日本国籍を有していた人が、事情により外国籍になった場合の、日本国籍のあり方を法的に整備するべきだと思います。何より、研究費が得られず、やむに止まれず外国に渡り成果を上げた人たちを、逃亡者扱いし除籍するのは国の恥ずべき行為だと思います。
    そしてノーベル賞受賞など都合の良い時だけ日本人として扱うのは、受け入れて研究を助成してくれた国に対して失礼というか、恥知らずな行為に思えて、一人の日本人として身が縮む想いです。

    5:52 PM 中嶋英雄

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