「複数国籍」に関する記者会見

2016.11.4

先日(10/27)日本記者クラブで「海外に住む日本人と複数国籍」というテーマの記者会見を傍聴してまいりました。

記者会見のYoutubeはこちらです。

海外に住む日本人と複数国籍 2016.10.27

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会見をしたのはトルン紀美子氏、ピレー千代美氏、武田里子氏(大阪経済法科大アジア太平洋研究センター客員研究員)、司会は中井良則氏(日本記者クラブ顧問)。

国籍の話となると、今年日本では蓮舫氏の件が世間を騒がせたからか、どうしても「ハーフ特有」の問題だと考えられがちですが、先日ご紹介したハーフでない“普通の日本人”や今回日本記者クラブの会見でスピーチされていたトルンさんやピレーさんのように「外国に住み外国人と結婚している日本人(ハーフではない)」も当事者なのですね。それぞれに「ハーフ」のお子さんもいらっしゃいますし、会見の中で「外国人と結婚している日本人」「ハーフ」など様々な立場から見た「国籍問題」を歴史もふまえながら聞くことができました。

会見で話題に上がった【個人の「国籍」をその国への「忠誠心」とつなげて考える行為】について今回改めて考えさせられました。最近、日本では「外国にルーツがある人の日本国籍」の話になると、「日本への忠誠心」につなげて議論されることが少なくないのですが・・・・印象に残っているのは武田氏の「(節税などのために)シンガポールに拠点を移してしまう日本企業の忠誠心はどうなっているのでしょうか」という発言。確かに世間は「個人」には「国家への忠誠心」を求めがちですが、企業には甘いのですね(苦笑)

このコラムの冒頭にも貼り付けましたが、こちらが記者会見のYoutubeです。

海外に住む日本人と複数国籍 2016.10.27

発言はどれも大変興味深く、ずっとメモが手放せませんでした(笑)

・・・・(笑)のマークをつけてしまいましたが、国籍問題は笑い事ではなく、海外で生まれた人はたとえ両親が共に日本人で日本国籍であっても3ヶ月以内に現地の日本大使館または日本領事館に「国籍留保の届出」を出さないと自動的に外国人になってしまい日本国籍を失ってしまうなど、日本という国は「いかなる理由があってもいったん日本を出た人」に対して、その人が日本人であっても本当に冷たいのですね。。上記の「3ヶ月」という期間は出産したばかりの人、病気を抱えている人、僻地に住んでいる人のことも考慮すると非常に短い期間ですね。。

そして「ハーフ」として一番考えさせられたこと。それは日本と外国の狭間にいる人々(「ハーフ」)が奨学金が伴う「留学制度」から完全にはみ出してしまっている件。海外の大学から日本の大学へ奨学金をもらい「留学」するには「外国籍をもった人として日本に留学しなければいけない」。よって日本国籍も持っている「ハーフ」は日本へ留学するために泣く泣く日本国籍を手放さざるを得なかったり、手放したくない場合は奨学金が伴う留学を諦めざるを得ません。(かといって、海外で高校を出ているため、「日本国籍の日本人」として日本の大学に入るのは金銭的にも学力的にもハードルが高いので、諦めざるを得ない。)

留学制度は「外国人」⇔「日本人」と悪い意味でキッチリ分け過ぎているため、その狭間にいる人々(日本人でもあり外国人でもある人々)はこの制度から締め出されており、結果的に日本での勉学を諦めざるを得ないケースが少なくないとのこと。

優秀な学生がいわばこういった矛盾ある制度により「(母国である)日本との接点」を絶たれてしまうことを悲しく思います。本来は日本で「グローバル人材」になり得た人が締め出されることに国にも本人にも何のメリットも無いです。

「今すぐ」解決しない問題であるのは重々承知しておりますが・・・それぞれの「枠」からはみ出す人が一人でも減ることを祈るばかりです。

サンドラ・へフェリン

コメント

  • 初めまして、朝日新聞のインタビューでサンドラさんを知りこちらのページにたどり着きました。
    若干(いやもっとか)右より思考の私からすると、やはり他国の国籍を持っている人物が国会議員でありかつ政党の党首となることに対し、正直抵抗感があります。
    日本に限った話ではないでしょうが、日本は特定の近隣諸国と関係がよくない事もあり、不安を覚えます。
    また、あの人の場合は対応がまずく不信感を抱かせたのは当然と考えます。

    一方、ネット世論に偏りがあることは事実で、ゼロイチの二元論に陥らない在り方を今後模索できればと思う次第です。

    コスモポリタンへの道は遠いですね(苦笑)。

    6:16 PM H.Y.
  • ひとりの当事者としてコメントします。
    極めて重要なことだと思いますので,詳細に説明したいと思います。
    わたしは片親が外国出身です。

    >他国の国籍を持っている人物が国会議員でありかつ政党の党首となることに対し、正直抵抗感があります。

    政治経済的な観点と,感情的な観点,2点コメントします。

    ・政治経済的な観点

    あなたは,国際社会における資本主義の変遷については,どのようにお考えでしょうか? 多重国籍の背景には,資本主義の変遷が,大きく関わっています。そして,資本主義は国民国家というルールの「あり方」に,大きく影響しています。

    あなたは,現在の資本主義の事情において,国民国家の「ルール」がどうあるべきと考えていますか?

    ・感情的な観点

    あなたにとって,外国に「つながり」をもつ人々は,どのような存在ですか?

    もしも外国に「つながり」を持ったとしても,日本社会に特別な思い,あるいは,愛着があるのであれば,外国の国籍を保持したとしても,それは何ら問題はないものと思います。そして,そのような特別な思い,愛着を持っている人々が歓迎されることは,当然のことだと思います。

    わたし自身は,外国に「つながり」はあるけれども,日本社会の歴史や,日系人の歴史を学んだことから,日本にたいしては,特別な思いを持っています。愛着もあります。

    ひとりひとりの当事者が,それぞれ日本社会にたいして,それぞれの思いを持っているものとおもいます。それらが日本社会において尊重されることは,極めて重要なことだと思います。

    また,外国に「つながり」を持っている立場であっても,日本語を話す人々はたくさんいます。日本の文化や習慣に慣れ親しんでいる人々も,たくさんいます。味噌汁を美味しいと感じたり,温泉につかって,気持ち良いと感じるわけです。地域のお祭りだって,楽しみます。

    単に他者との差異にばかり関心を持つのではなく,「共通項」を見出すことのほうが,これからの日本社会においては,極めて重要なことだと思います。それは,なにも外国に「つながり」をもつ人々とのコミュニケーションのみならず,すべての社会の構成員にあてはまることだと思います。

    >日本は特定の近隣諸国と関係がよくない事もあり、不安を覚えます

    はじめに,「特定の近隣諸国と関係」によって,あなたはどのような利益,あるいは,不利益をこうむりますか? 日本政府が特定の近隣諸国との関係を悪化させたことにより,あなたはみずからの仕事を失うのですか?

    外国に「つながり」をもつ人々の日本社会における日々の生の営みと,日本政府の政治や外交方針は,基本的に,切り離して考えるべきです。

    たとえば,わたしは台湾系日本人です。偶然にも,渦中のあの女性と,同じ立場にあります。

    しかしながら,わたしは台湾系日本人ではありますが,国民党や民進党(台湾)とは,関係はありません。台湾の軍隊とも,関係がありません。接触したことも,これまで一度もありません。

    また,日本国内において緊急事態が発生したときに,台湾の政府がわたしに何らかの「命令」を出すことも,一切ありません。

    もしも,あなたが日本政府の政治や外交方針に意見があるのであれば,あなたが直接,霞ヶ関に足を運び,関係者に陳情をすればいいのだと思います。あなたには,それだけの行動力がありますか? (「言うだけ番長」になっていませんか?)

    あなたが抱いている,「特定の近隣諸国と関係」というものは,外国に「つながり」をもつ人々とはまったく関係のないものだと思います。言われのないことで,外国に「つながり」をもつ人々が,日本社会において不利益をこうむることは,あってはならないことです。それは,あなた自身にとっても,同じことだと思います。

    8:59 AM T. Go
  • 隅田川のクルーズに乗った時に、いろいろな出し物がありました。和太鼓の出し物や、洋楽に合わせた現代風のダンスの出し物があったんですが、和太鼓の出し物の時はシーンとしていて、洋楽がかかって、ダンスが始まると人が集まって、盛り上がっていました。一緒に乗船した仲間の人は、和太鼓は人が集まらないに、西洋風のダンスが始まると人が集まったね、って皮肉を言っていました。
     日本人でも日本の文化を持ち上げるわけでもないし、外国人でも日本の文化に興味をもって、日本で生活していることもあるので、日本人だから信頼できるとは限らないと思います。コスモポリタンが程遠いいなんてことはなくて、コスモポリタンは日本にもあるけれども、主流のメディアや言論などの中にその視点がないだけで、日本での生活もコスモポリタンでないとすでにやっていけないという状況にあるのでは。

    12:34 PM V
  • 日本人同士が信頼しあっているかどうかも怪しいと思います。同じ日本人でも、冷遇されれば、心を閉ざして、誰にも相談せずに過ごすだろうし、日本人をいじめる日本人もいますから、日本人がそんなに互いに信頼しあって、手を取り合い未来に進んでいっているなんてこともないですよね。

    1:24 PM V

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