ドイツと日本、今までと、これからと(日独ハーフの視点26)

2011.12.31

今日は2011年最後の日。今年が終わるとともに「日独交流150周年記念」の年も終わった。

日本とドイツのハーフである私は、昨年秋に「日独交流150周年記念」の年がスタートした時、ワクワクした。イベントも沢山あるし、きっと2011年は日本とドイツにとって特別な年、記念すべき年になるにちがいない、と。

実際に2011年は特別な年となった。でもそれは、私たちの期待とは違う意味での「特別」。地震、津波、そして原発事故により、日本人にとってもドイツ人にとっても、今年は忘れられない一年になってしまった。

3月の震災の直後、私は複雑な気持ちでいっぱいだった。地震と津波により全てを失ってしまった人たち。また、原発事故により故郷を離れざるを得なくなった人たち。彼らの事を考えると胸が痛んだ。同時に、日独ハーフとして、日本人とドイツ人の関係を考えると更に複雑な気持ちになった。

それというのも、日本人とドイツ人とでは原発事故に対する考え方や対応がかなり違い、3月末や4月の段階ではその溝がだんだん深くなってきているように感じたからだ。在日ドイツ人の多くが日本を離れ母国へ帰る中、その行動が日本に留まった多くの日本人を傷つけた。それを見て、もしかしたらこれからずっと埋められない溝が日本人とドイツ人との間にできてしまったのかもしれない、とさえ思った。

来日を予定していたドイツ人のキャンセルが相次いだ。東北や関東に滞在予定だったドイツ人はもちろん、関西など被災地とはだいぶ離れた地域にホームステイをする予定だったドイツ人も日本滞在を取りやめ、残念がる日本人ホストファミリーに胸が痛んだ。日本全体が見放されてしまった。そう感じた。でも、しばらくして考え方が変わった。今年は日本人とドイツ人の友好が試される時なんだ。今、状況は大変だけれど、きっと長い目では上手くいくのだと。

政治ではなく民間レベルの話だが、今までは特にこれといった対話をしなくても、自分の思いを言葉にし相手に伝えなくても、なんとなく日本とドイツは上手くやってきていたように思う。でもこれからの日独の友好においては、自分が今どういう状況でどんな気持ちでいるのか、相手に何をしてほしいのか、何を言ってほしくないのか、等をハッキリと意思表明し会話をしていく事こそが、これからも良い関係を築ける鍵だと思う。

私もこれから機会があればドイツ人に日本の今を伝え、日本人にドイツ人の考えていることを伝えていきたい。今お互いがお互いの国をどのような目で見ているのか、という点にスポットをあて、そこから対話をし誤解を解いていきたい。

今、日本では経済の発展のために海外旅行よりも国内旅行をしよう、という動きが強いと感じるが、日独ハーフの私としてはやっぱり多くの日本人にドイツを訪れてほしいと思っている。そしてドイツ人にもまた日本に来てほしい。日本を自分で見て、感じて、そして自分なりの日本のイメージを持ってドイツへ帰ってほしい。その印象は現地のメディアを通した日本像とは異なるはずだ。

今こそ日本人とドイツ人、お互いに交流をしよう。どんどん意見を言い、どんどん会話をし、どんどん交流をすること。

日独交流150周年記念の年に災害に見舞われたことには何か意味があるはずだ。それはきっとお互いにもっと対話をしろという事なのだ。これからも良い関係が築ける。そう私は信じている。

                                                            サンドラ・ヘフェリン

コメント

  • ドイツは民衆の人種差別が酷いし政府やメディアも一緒くたで誰がなっても同じだから日本人には不快なだけ。

    日本人がドイツにいったら嫌いになるだけ。
    好きになって残ったら残ったで大変で反日になるだけ。
    かかわっても日本に徳はないんだよな。

    ドイツ人は日本にいたら言いこともあるし悪い事もある。
    メディアも多様だからドイツを悪くいう人もいい事を言う人もいる。

    と、日本からみるとドイツはこんな感じなんだけどどう思いますか?

    9:24 AM ネコタ
  • ↑日本からみると、じゃなくてネコタさんからみると、そう見えるんですかね。ドイツに行って不快になった、という日本人の話はあまり聞いたことがありませんが。

    オーストリア、フランス、イタリアに滞在してからドイツに行くと、いかにドイツ人が他の人種に対して寛容かが分かると思います。

    新聞や雑誌メディアについては質も量もドイツの方がハッキリ言って上ですし、内容も多様だと思います。テレビはあまり見なかったので判断しずらいですが、ZDFの福島の報道を見ると、ちょっとなあ・・・、と思うところはあります。

    10:54 AM kakomuku
  • 追加です。

    私は研究者ですが、少なくともサイエンスを生業とする人々に関しては、震災後に日独の間に大きな溝は生じていません。2011年も沢山のドイツ人が日本の学会に参加してくれましたし(日本側が気を遣って西日本に開催地を変更することはあった)。

    「反原発」と「放射能への恐怖」は別の問題だと思います。ドイツが「反原発」に転換したことは歴史的背景やエネルギー問題への姿勢などからリーズナブルだと思いますが、放射能が怖くて東京は西日本への渡航もキャンセル、というのは個人的な不勉強、というか最初からあまり乗り気ではなかった計画だったのかな、と思います。ちょっと調べれば西日本にほとんど影響がなかったことは分かりますし。

    福島事故をきっかけにドイツが脱原発を決めたこと、そして日本人がドイツのエネルギー政策や環境教育に以前よりも注目し始めたことで、日独の関係は深まる方向に向いていると思います。

    私自身、ドイツ人の友人や旧同僚との対話も深まり、日独のメディアが福島や日本の原発の実情を正しく伝えていないことをお互いに理解しました(最初からメディア一般に懐疑的な人たちですが)。

    個人的な溝は個人的に埋めて行くしかありませんが、サンドラさんのように、日独の両方をよく知る方が「対話」の機会をどんどんつくってくれると、嬉しいなあと思います。そういう意味でも、このブログはずっと継続して下さいね♪

    ちなみに、冬に東京に来たドイツの方に東北にも遊びに来て、と言ったら、”Katastrophetouristen(震災見物客?)”になるから今回はやめておく、と言われました。実際にこちらでは、観光客が減って打撃を受けている地元産業も多く、物見遊山でも何でもいいので国内外の人に被災地や復興の様子を見に来てもらって、ついでの東北の良さも体験してほしい、と思っています。

    放射能が怖い、という方には無理にお願いはできませんが、行きたいけど被災地に遠慮している、という方には、是非どんどん来てほしいと願っています。サンドラさんも、もし機会があれば日本へ来たドイツの方々に東北への訪問もおすすめして頂けると嬉しいです!

    11:10 AM kakomuku

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