バイリンガルでないハーフは欠陥ハーフ?(日独ハーフの視点3)

2009.12.9

ハーフなのに日本人顔だったり、ハーフなのにかわいくなかったりすると、「ハーフなのに、もったいない!」と言われてしまう話を前回したけれど、この「もったいない」という言葉、ハーフは容姿以外の面でも結構頻繁に聞かされたりします。たとえば語学。世間は、ハーフはバイリンガルというのが当たり前だと思っているみたい。

そう、ハーフを前に必ず出る質問。「○○ちゃんはバイリンガルだよね?」 でも例えば私の周りの日独ハーフを見ていると、日本語とドイツ語の両方ができるバイリンガルもいれば、日本語のみを話し、ドイツ語はできないハーフもいる。そしてドイツ語ができないハーフはよくお決まりの質問「ドイツとのハーフなのに、なんでドイツ語ができないの?」と聞かれてしまう。

でも言語が1つしかできないのは、ハーフである本人がそれを選んだわけではなく、そのハーフが育った環境に原因がある事が多い。両親が離婚し、日本の親に引き取られ、日本で育ち、日本の学校に通っていれば、自然な流れで日本語が母国語になり、ドイツ語はできなかったりする。本人が努力を怠ったわけでもなんでもない。それなのに周りは「えーっ?! そうなの? もったいない!」の大合唱。

ハーフがバイリンガルであるか否かは、例えば、親の事情などハーフ本人の意思とは関係のないところで決まる事が多い。だからハーフ本人に「何でできないの?」と聞いてもあまり意味がない気がする。聞かれた方は自分に決定権のない事について延々聞かれる事で複雑な気持ちになるし、そこでイチイチ自分の生い立ちを説明しなきゃいけないのも悲しくなるよね。世の中、幸せな生い立ちばかりじゃないからさ。

英語ができなくて「もったいない」、外国語ができなくて「もったいない」、これはハーフに限らず、日本人でも何人(なにじん)でも同じなのではないでしょうか。色んな言語が話せればもちろん便利だけれど、話せるのが、母国語の1ヶ国語だけでも全然問題ないんじゃないかな。「もったいない発言」の裏には「ハーフは環境が整っているのに外国語を習わないなんてもったいない」という考えがあるのだろうけど、環境が整っていなかったから習えないのであってね。

何だか色々書いちゃったけれど、この「もったいない」という言葉、お金や節約ネタの時にはもってこいの言葉だし、実はは結構好きな言葉だけれど、ことハーフに対してはあまり言ってほしくない、というのが本音かな。

ちなみにウチの弟は5歳ぐらいの時に日本語もドイツ語も話すバイリンガル(これぐらいの年齢の子供だと両方の言語で読み書きはできず「話す」だけなので、厳密に言うと、この年齢でバイリンガルという言葉を使うのは正しくないそうですが)だったのだけれど、小学校低学年のある時から「もう土曜日の日本人補習校に行きたくない!」と言い始め、親もあっさり土曜日の日本人学校を辞めさせてしまったので、その後、日本語をきれいに忘れてしまいました。

でも本人が16歳になってからまた日本語に興味を持ち始め、日本語レッスンを受け始めたんだ。途中で日本語を辞めてしまったことを「子供のワガママ」と片付けるのは簡単だけれど、子供は子供なりに「自分はドイツ人なの? 日本人なの?」という自分のアイデンティティーに悩んでいたりします。子供には子供なりに「言語」や「アイデンティティー」に対する葛藤があり、それが何かのはずみで「もう日本語イヤ!」または「もうドイツ語イヤ!」と拒否反応を起こすことがある。大人には、それを真剣に受け止める義務があると私は思うんだ。大人だってさ、気持ちの切り替えが上手にできない人は色んな言語に囲まれながらの生活がストレスになる事もあるのに、子供をポーンとそういう状況に投げ込んで「子供はスグに慣れるから大丈夫」と片付けちゃうのは大人の勝手なんじゃないかしら。あはは…なんか私子供の代弁者みたいですね。

弟は弟で周りに「なんで日本語が、あまりできないの?」と聞かれるわけだけれど、言いたいのは、言葉の問題は思う以上に複雑だということ。顔がガイジン風だからといって外国語ができるではないし、お父さんが外国人、イコール子供が自動的に外国語を話せる、というわけでもない。当たり前だけれど、ハーフだからといって、生まれてくる時に「おんぎゃ〜」の代わりに「はろー! Mummy〜!」なんて生まれてくるわけないんだしさ(笑)

次回は日独バイリンガルの「教育」についてです。お楽しみに!

                                            サンドラ・ヘフェリン

コメント

  • うちの娘には英語やベンガル語を無理に詰め込むことはしたくなくて、遊びながら覚えてほしいと思っています。
    私の場合は遊びではなく、必然だったので、言葉を覚えるのに楽しいという感覚ゼロ。子供のころは周りが英語ができて当たり前だったため、逆に高学歴=英語はできて当たり前、のヘンな方程式が出来上がってしまいました。偉そう?
    私の場合は日本で、高学歴なのに英語ができない(使えない?)人が多い事実に、本当にびっくりしました!

    10:58 PM Jannat
    • Jannatさん、こんばんは。言葉は楽しく!がいいですよね。何でもそうだけど、嫌だな~、と思いながら覚えるのは身につかないし…。ハーフだからといって、何カ国語も(例:日本語、ベンガル語、英語)完璧にできて当たり前!と期待するのは酷ですよね。顔が外国人だからといって、英語が話せるわけではないし、外国の血が入っているからといって、英語が話せるわけでもないんですよね。そのあたりの事がなんだか、ごっちゃにされちゃってる事が多い気がしますね。あと、「子供のころは周りが英語ができて当たり前だったため、逆に高学歴=英語はできて当たり前、のヘンな方程式が出来上がってしまいました。偉そう?」と書いてましたが、偉そうでだいじょうぶですよ^^(私が一番偉そうです^^;)★サンドラ★

      11:19 PM サンドラ・ヘフェリン
  • 私の体験を共有したいと思い、こめんトに書き込んでます。

    私は日本育ちの純外国人ですが、アイデンティティーに関してはハーフと同じように感じていました。しかし、大きくなってからきづいたのですが、

    アイデンティティーは決して

    1人 1アイデンティティー

    という決まりはなく、

    1人 多種アイデンティティー

    という状態が発生する事も十分にあり得ると言うことです。

    つまり、私が言いたいことは、育つ環境でアイデンティティーに悩む事もあるかもしれないけど、あたかも所有するアイデンティティーは一つだけしか許されないと心のどこかで思ってしまうのではなく、逆にいろんな要素があるアイデンティティーを自分が持っていることにほりを持ち、実は悩む事なんて何もないのさ\(^^)/と言うことです。

    もしアイデンティティーに悩む方がいれば、良ければこんな考え方もあると参考にしてもらえばうれいです。長文失礼しました。

    11:08 AM とうりすがりの純外国人より
  • Grüβ Gott–;)
    Sehr angenehm!
    はじめまして、Sandra様
    コウグチ ミチヒロと申します。
    NHKドイツ語ラジオ口座を毎日、聞いています。
    このHPを拝見するまで、ドイツ人と思っていました;))

    ドイツ語は独学で2年ほど勉強し、FACEBOOKでドイツ、オーストリア
    の友人とメール交換していますが、未だに、Grammerが難しいです。

    とにかく、毎日継続することが、私の生き方です。
    よろしくお願いいたします。
    Ich wünsche Ihnen schönst Dienstag! Liebe Grüβe.
    Michihiro Kohguchi.

    9:40 AM 河口充宏
  • こんにちは、ドイツ在住、日本・スラブ系某国のハーフの子の母親です。

    ハーフのお母さんのブログはたくさんあるけど、大人になったハーフ本人の声を聞く機会はあまりないので、とっても勉強になります。

    ハーフの皆さんが、

    「○○ちゃんはバイリンガルだよね?」
    「ドイツとのハーフなのに、なんでドイツ語ができないの?」

    と聞かれてたら、

    「△△ちゃんのお母さんは大阪の人なの?お父さんは鹿児島!?」
    「△△ちゃんは、関西弁と鹿児島弁が話せるの?」
    「大阪と鹿児島とのハーフなのに、なんで関西弁ができないの?」

    って、返してあげるのもいいんじゃないでしょうか。

    6:14 PM あお
  • 「純ジャパ」って何語ですか?
    侮蔑語?

    7:35 AM 純日本人

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